建築は言葉も面白い

今でこそスマホやパソコンを使ってわからないことも瞬時に答えが出てきますが、
それ以前は人伝えや、テレビや本で情報を得ていたので、
元の意味が人に伝わっていくうちに少しづつ変わっていくなんていうことが現代でもまだありましたよね。
それってすごく面白く可笑しいことなんですが、今は良くも悪くもすべての人がプロセスを経ずに答えを手に入れることのできる時代です。
検索で調べれば出てくることもあるかもですが、私が親方から聞いたお話を残しておこうと思います^^

  • 甲斐性無し

「あいつは甲斐性なしだ」というと、頼りない、お金の稼ぎが悪く家族を養えないなどのような使い方をしますよね。
これ、私が大工見習いだった頃に親方が、「知ってるか、かいしょってあの会所のことだよ」と教えてくれました。
建築で会所いうと、会所枡のことで、排水管が2本以上合流し水をためるバケツのような役割をする部品のことです。
人が集まる場所という会所という意味から、水を集めて溜める場所という意味でそう呼ばれたようです。
つまり「会所なし」だと排水を集めて溜める場所が無いから、水は右から左に流れてしまいますよね。
だからお金が貯まらない人のことを「あいつは会所なしだ」と言ったそうです。ほんまかいな。
常用使いでは「甲斐性」と書くはずですが、「会所」もあると言い切ってました笑

  • ろくでなし

ろくでなしって建築から始まった言葉だよと教わりました。
建築で「ろく」というと、「」と書きます。
これは今でも「陸屋根」などで使われている言葉ですが、平、水平、という意味です。
陸でなし」ということは真っ直ぐでない斜めになっている、という意味から素行の悪い真っ直ぐ生きていない人に対してろくでなしというようになったそうです。

  • 青二才

現代の人は青二才なんて使うんですかねー。。。
竹は建築資材としてその他食器や道具を作るための材料として広く使用します。
この竹というのは非常に成長が早く、2年目で大人の竹と見た目は同じまで成長するんですね。
ですが建築資材としては3年以上経ったものではないと中身が出来上がっておらず、強度が出ません。
これを見た目だけで中身の伴っていない人に対して使い、青二才と言ったそうです。

  • いの一番

いの一番というと、真っ先に。というような意味合いで使いますよね。
これは建築では図面を書いた時に「番付」という工程があり、
平面図の横軸にいろはにほへと・・・、縦軸に一二三四五・・・、という割付を行い木を組むときにわかりやすくナンバリングしたもののことです。
「い」と「一番」は縦軸横軸の最初の出だしなので、最も始まりという意味から使われ広まったのでしょう。

  • 一寸

居酒屋さんの提灯に「一寸一杯」と書いているのを見たことがありませんか。
これ実は「ちょっといっぱい」と読みます。
1寸というと約3センチのことなんですが、親指の第一関節の長さを一寸としたんだと聞きました。
手から肘までが1尺、両手を広げた時の長さを1ひろといったり、
昔は人の体のあらゆる部分の長さから様々な寸法を考え出したんでしょう。

  • うだつが上がらない

建築で「うだつ」というと家と家との境目に飛び出して作る防火壁のことです。
今でわかりやすく言うと「袖壁」ですね。
火災が起きた時に、火が隣家に燃え移らないよう、移されないように、屋敷を守り、蔵を守るため火を遮る目的としてつけたものです。
きっとうだつで守るほどの財産を成した人に対して、
いつまでも地位向上しない人のことをうだつが上がらないといったんでしょうか。

  • 座って半畳寝て一畳

も新築では激減しましたが実家や畳スペースなどにはまだまだあります。
これは読んでそのまま、人が座れば畳半分のスペース、人が寝転べば畳1枚のスペースを使うというところから来ています。
昔はその部屋に何人収容できるかを畳の枚数でおおよそ読んでいたそうです。

  • 左官

左官屋さんは塗り壁仕事ですね。
鏝で塗り壁をする際、左から右へ塗って仕上げてくるから左官だとか。

  • ネコ

なぜか大工の間では木で下地を作る際、高さを調整するために間に挟む木っ端のことをネコとか言いますね。
は狭いところでも入っていくからだ」と言っていました。
かとおもったら外構工事で砂や砂利を運ぶ手押しの一輪車もネコと呼びます(ネコ車ともいう)。
これも「猫のように狭いところを通っていけるから」なんて言ってましたが、どうなんでしょうね笑


以上、ここに書いたことは私の大工親方から聞いたことであり、真偽の定かはわかりません
しかし、ほんとであれウソであれ、あたかもほんとのことのようだと腹落ちしてしまうところが面白いと思いませんか。
もっともっといっぱいあるんでしょうね!
今度北海道へ親方に会いに行ったときもっと他にもないのか聞いてみますね。
思わず「なるほど」と唸ってしまうような建築雑談でした。

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