Low-Eガラスの選択肢

“Low-Eガラスは全方位遮熱”

断熱性能を上げるための一番の要開口部ガラスについてです。
もう今どき最低でもペアガラスにLow-Eガラスは当たり前になってきました。
ここより上のグレードはアルゴンガス入り、クリプトンガス入り、トリプルガラス等になります。

案外見落とされがちで、しかも工務店の任意になっていることが多いガラスの選択肢
それがLow-Eガラスの「遮熱」「断熱」かです。

答えを先に書くと弊社では全方位遮熱一択としています。
その考察を以下にまとめます。
※マニアックなお話になるので読むのが面倒な方は全方位遮熱だけ頭に入れておけばOKです!

まずLow-Eガラスの中にも「遮熱」「断熱」という選択があるいう説明からします(簡潔に)。
Low-Eガラスとは複層ガラスの中空層のガラス面に特殊な金属の膜をコーティングしているガラスのことを言います。
これはペアガラスだと2枚あるガラスのうち室内側か室外側のどちらか1枚にそのコーティングがされているんですが、、、

「遮熱」の場合・・
側のガラスにコーティング、赤外線を吸収・反射します(日射熱は6割程度カット)。
ガラスに色がつきます(薄いグリーンや薄いブルー等)。

「断熱」の場合・・
側のガラスにコーティング、赤外線のみ吸収・反射します(日射熱は4割程度カット)。ガラスはクリアカラー。

どちらも断熱性能はありますが、直射日光の太陽熱をカットするかしないか(といっても2割程度の差)で遮熱と断熱に分かれます。
以上を前提知識としてください。

※YKKWEBサイトより引用


コロナ以前くらいまでの提案では東西は遮熱、南北は断熱としていました(立地条件はおいといて)。
東西は朝夕の直射日光がまともに窓から入ってくると暑いというのが第一の理由で、南は冬場日射熱を取り入れる方が暖房に有利で経済的だというここは設計におけるセオリーそのままでした。

※YKKWEBサイトより引用

上記の図のように夏の直射日光の熱に関しては軒や庇で対抗していたんですがここ近年の夏の暑さ、そして暑い時期の長期化がもう無視できない域に入ってきたと実感していますので、9月の日射を取り入れないようにすることが重要だという考えに今は移行しています。

ここで厄介なのが太陽の高さのピークが夏至の6月20日頃なのに対し、暑さのピーク8月中頃約2ヶ月のずれがあることです。つまり暑さのピークを軸に軒や庇で日射遮蔽をしようとすると窓の高さに対して庇の出幅を不自然なまで出さないと実現しません。
なのでパッシブ設計においては日中まだまだ暑い9月問題というのが設計者の悩みの種でした。
9月23日春分の日の正午の日射角度は約55度ですから、太陽が西に傾いた暑い時間帯の14時15時には約40度の角度で直射日光が室内に入ってきます。これは袖壁やシェード、樹木が無いと塞ぎようがありません。。。
それが今や9月、10月上旬でも昼間の日差しが暑いということになれば、今後の気温上昇も鑑みて開口部は全方位遮熱とするべきという結論に至りました。

冬の日射取得2割を捨ててでも夏の不快な暑さをカットすべきというところは、冬に室温を上げるのと、夏に室温を下げるのとでは、冬に室温を上げる方が容易だからということと、
高気密高断熱住宅では冬場日射取得をした場合13時~15時頃の時間帯でオーバーヒートしてしまい暖房を消すこともあるからという裏付けがあります。

実際実感としてはそこまで大げさではないと思っていいでしょう。
小さなことですが知った上で自ら選択するということが大事だという今回のお話でした。
おまけに全部読んでいただいたお礼で他でも書いていますが、非防火のペアガラスに関しては必ず樹脂スペーサーをご指定ください。1カ所あたり数千円のアップになるかもしれませんが重要です。※防火サッシはアルミスペーサーのみで樹脂は使えません。

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